町街さがし
Vol.07「水天宮前」
地下鉄の出口から地上に出る。なんて良い天気なんだろう。目の前には駅名にもなっている水天宮が威風堂々と建っている。その前の交番も何処か水天宮に合わせてなデザインな建物だ。
この水天宮は2016年4月に今のこの新社殿になり最新の設備が導入された神社で免震構造などが採用されている。
とりあえず正面に行ってみた。ものすごく近代的でハイテク感満載。21世紀の神社ってのはこんな感じなんだなー。と思いながら手水を済まし二礼二拍手一礼で参拝をして水天宮前を散策することに。
水天宮を出てすぐ左には昔ながらの街並みの奥にタワーマンションが見えて。この街も最近よく見るような街並みであった。なんか悔しくなってきた俺はここ水天宮前でも懐かしく古き良き下町なんて言われるような街並みを探すように裏路地へと入って行った。
するとすぐにタバコ屋さんと魚屋さんとが見えてきた。やはりこういう街並みが好きだなー。とそのまま進み空の窓口でもある箱崎エアターミナルに出くわした。
水天宮前から箱崎、本当に目と鼻の先だ。思っていたよりも実際歩いてみると凄く狭いエリアで水天宮前は構築されていた。
気を取り直して、来た道とは違うルートでまた水天宮前駅方面へと向かった。すぐさま創業明治12年のド渋な傘屋さんがあった。二階の喫茶店といい凄く雰囲気のある面持ちで素敵過ぎる。
今度は水天宮を右手に見て駅のある交差点を人形町方面へと散策。すぐに雰囲気のあるワラビ餅を売るお店の外観に惚れ惚れして通りを渡る。そこから裏路地へと進むとこれぞ下町という路地に出くわした。今日はなんだか初っ端からハイテクな神社とかだったのでようやく落ち着いてきた。
ちょっと失敬してこの細い路地をすり抜ける。なんだか先の角を曲がるとアノ子の家があるような気がしてきた。コロッケの匂いのするお肉屋さんの並びの。幼少期の記憶ってものはよく匂いで紐付けされている。それが逆の場合もある。風景を見て、しないはずの匂いを感じたり。自分がこういった町歩きをして下町な路地裏を好むのも幼少期に染み付いたちょっとしたヤングトラウマみたいなものだと思っている。自分の記憶のルーツを辿るような町歩き。
そんなことを思いながらボーッと歩いていたら小さな交差点の先に綺麗な桜が見えてきた。
町行く人達は足を止めその桜を見て紐付けられた記憶や思い出を楽しんでいるように見えた。
(注)この取材は緊急事態宣言が発令された前日4/6に行っております。
星雲社より発刊。